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避難の主婦ら、安曇野から福島へ「野菜のかけはし」活動
05月15日(火)

安曇野で野菜を育て、福島県などに送る活動「野菜のかけはし」を本格化させたの小沢さん(右)らの主婦グループ=安曇野市穂高柏原
 昨年3月の東京電力福島第1原発事故後、福島県いわき市などから安曇野市に身を寄せている30代主婦5人が、安曇野産野菜を同県などの希望世帯に安価で送る活動を始めた。福島では内部被ばくを心配し、子どもに関東周辺の野菜を食べさせることを控える母親もいるからだ。昨秋に無農薬、減農薬の地場産野菜を買って送り始め、ことしからは自分たちでも野菜作りに挑戦。今月には初めてレタスを収穫した。「少しでも心の支えになりたい」としている。

 活動は「野菜のかけはし」と呼ぶ。関わっているのは昨年6月、いわき市から安曇野市堀金烏川に移り住んだ3児の母、小沢睦美さん(33)、東京都杉並区から同市穂高に移り住み4人の子どもを育てる三好祐子さん(39)ら。放射能に不安を抱く福島県などの母親たちの滞在を格安で受け入れてきた同市三郷小倉の民宿経営、増田望三郎さん(43)も活動に協力している。

 小沢さんと三好さんは、子どもを通わせる市内の保育所で知り合った。共にいわき市や杉並区の「ママ友」に、農産物直売所で買った安曇野産野菜を送っていたと知り、意気投合。小沢さんは、福島県から県外に身を寄せるママ友同士が情報交換するインターネットサイトで、同じいわき市から安曇野市穂高に来た2児の母、若松知子さん(34)を知り、連絡。昨年10月、農家から共同で野菜を格安で仕入れ、「野菜のかけはし」と名付けた活動を始めた。

 増田さんの仲介で地元農家が、リンゴ、サツマイモ、キノコ、ニンジン、キャベツなどを安価で提供。小沢さんらは約10種の野菜を1セット1800〜2400円で、いわき、須賀川、郡山の各市や都内の約30軒に送っている。

 ことしからは、堀金烏川に約2千平方メートル、穂高柏原にビニールハウス一棟分の畑を借りて野菜作り。震災前に県外から移り住んでいた高橋香織さん(37)=同市穂高牧、河野純子さん(35)=同市穂高=も参加し、女性5人が初体験の農作業に励む。3月に植えたレタスが300個以上実り、今月から順次、出荷を始めた。今後はネギ、ジャガイモ、トマト、ズッキーニ、ラディッシュ、トウモロコシ、モロヘイヤ、カボチャなども育てる計画だ。

 若松さんは今も毎月1回はいわき市に帰る。現地では地元産野菜を食べて地元農家を応援する、といった考え方もあるが、食材に不安を抱える母親もいるのも現実。若松さんは「安曇野の野菜で心の支えになりたい」と話す。

 小沢さんは「細く、長く続けたい。子どもに安心な野菜を食べさせたい、という気持ちを持つ私たちから届けたい」と言う。

 都内の友人から「食卓から野菜が減った」「スーパーで産地を気にしすぎて野菜を買わずに帰った」などと聞いてきた三好さん。安曇野産野菜が身近にある環境の良さを実感する半面、遊休農地が増えている現状も知り、「自分たちの活動で、逆に安曇野の皆さんが野菜のおいしさを見つめ直すきっかけにもなればうれしい」と話している。

http://www.shinmai.co.jp/news/20120515/KT120511FTI090003000.html